ホーム > 一行三昧~足利ZEN~ > 福厳閑話 > 『魂まつり』
2021.07.18
『魂まつり』
令和3年も7月15日に足利大学附属高校で,全校生徒出席の宗教行事「魂まつり」がありました。
聖徳太子像を本尊としてお祀りする講堂に,私を含めた宗教科の教員と生徒会の生徒たちが早朝から支度をして,法要では生徒さんが献火献香献花を供えます。
当日は足利仏教和合会から5カ寺(臨済宗・曹洞宗・天台宗・浄土宗・浄土真宗)のご住職がお集まりくださり,和合会会長・龍泉寺(天台宗)ご住職が導師を務められて,先祖供養並びにあらゆる世界の亡き御霊への供養,学校関係者の新盆供養を致しました。
その後はご法話を生徒一同で聞きます。今回は福厳寺住職が担当いたしました。
「魂まつり」でありますので,お盆(盂蘭盆会・うらぼんえ)についての内容でした。日本では7世紀頃にはお盆の行事が宮中で営まれていたと『日本書紀』に記されています。生徒たちが毎朝お唱えする聖徳太子の『憲法十七条』も『日本書紀』に記されています。
法話では,お盆の語源とされる「盂蘭盆」=サンスクリット語「ウランバナ」が「逆さずりの苦しみ」の意味であり,目連尊者と地獄に堕ちてしまったお母さんのお話しをされました。そして新説でもある「ウルバン」が「盂蘭盆」の語源である話もされました。
古代イラン系の言葉で「死者の霊魂」を意味した「ウルバン」を、漢字の発音をつかって音写したものが「盂蘭盆」と考えられているそうです。イラン系の民族で、シルクロードにおける交易に大活躍したソグド人が、古代中国に死者の霊魂をまつる祭祀を持ち込みインドから伝来した仏教と融合して、現在のお盆(盂蘭盆会)の原型が成立したという説でした。
語源の説も興味深いものですが,飛鳥時代から引き継がれてきたお盆の風習は,先祖の霊魂を祀り供養して,不安の多いこの時期に大切な自分に具わる「慈しみの心」を自覚して実行できる良い機会でもあります。高校生にとって楽しみな夏休みではありますが,お盆の行事をしっかりと務めてご先祖様の霊魂,自分の命,みんなの命に感謝し日々を過ごして頂きたいです。
「魂まつり」後,夏休み前最後の授業で感想を生徒に聞いたところ,「賑やかなお祭りだと思って楽しみにしていたけど予想と違った」と感想がありました。
お盆で戻ってくる霊魂も,私たちが賑やかに元気にしていることが楽しみなのかもしれません。